どんなシステムにおいても、データの入力は一番つらい作業である。
それが患者の命を預かる医療現場においてはなおさらのこと。本業である診察の邪魔をするようなシステムなら使いたくないというのが本音だろう。その一方で、診察データの共有化や情報開示は、新しい時代の医療に必要不可欠なものである。
矛盾する両意見の解決策である手書き入力を、現場の声を元に実現・開発した経緯をレポート
1.電子カルテのデモが「欲しい」といわれた理由
弊社が設立して間もない頃(2000年)、タブレットNo1メーカーのワコム様より、「電子カルテのデモソフトを開発して欲しい」との依頼を受け、VisualBasicで作成したソフトがあります。
「PenDoc」と名前をつけたこのソフト、画像や写真・文字列(電子はんこ)を、自由な位置に自由な大きさで貼り付けることができ、さらにコメントをメモ書きできるという代物。ワコム様の原案に、プラスソフトのアイデアと技術を付け加えて出来上がったソフトですが、電子カルテに関してまったく無知な弊社は、「このレベルが当たり前」と勝手に思い込んでおりました。
ところがその年の、モダンホスピタルショウ(医療のITに関する展示会です)での反応には、驚きを隠す事ができませんでした。単なるデモソフトに過ぎないPenDocを「欲しい、どこに売っているんだ」という来場者が何人もいたのです。
なぜだろう?と疑問に思ったのですが、モダンホスピタルショウに行って納得。多くの電子カルテメーカーさんの手書き入力部分は、PenDocに比べて使いやすいものでは無かったのです。例えば、「1つの画像の上に書き込むだけ、下絵を自由な大きさ・位置に貼り付けられない」というものが多く見られました。
そして、ペンの動きが遅い。タブレットを単なるマウスモードでしか利用していないためでした。
しかし、考えてみると当然のことでもありました。なぜなら、電子カルテメーカーさんの重要な業務は「バックエンドをしっかり作り、バグの出ない確実に動くシステムを作る事」にあったからです。平素、ユーザーインターフェースを重視し、フロントエンド部分に注力する弊社は、あまりそこに考えが行かなかったのです。
PenDocは、電子カルテメーカー様にソースを開示しましたが、VisualBasicで作成したとはいえ、複雑になってしまったソースコードを読み、解析して利用していただくということは、結局ありませんでした。
2.電子会議システムの技術を、他社アプリに提供
その年の後半から翌年にかけ、弊社は電子会議システム「PenPlusプロ」を開発しました。PenPlusプロは、以下の特徴を有する手書き入力ソフトです。
@ 画像を自由な位置に、自由な大きさで貼付け、移動が可能。
A 文字列を自由な位置に、自由な大きさで貼付け、移動が可能。
B それらの上にメモ書き可能。
C アンドゥ・リドゥが20回まで可能。
D 複数ページの処理、保存が可能。
E 人にストレスを与えない性能(処理スピード)
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これらの特徴は、電子カルテ・デモソフト「PenDoc」の全ての機能を含み、さらにVisualC++で開発しているため性能においては遥かに上のものに仕上がっていました。
そこで弊社では、「せっかく作成したこの技術を、他社でも利用できるようにしたい」と思うようになったのです。もちろん、そこに至る原点は、もちろん前年のモダンホスピタルでの出来事が頭にありました。
3.改良に失敗、諦めかけたが・・・
翌年のモダンホスピタルに間に合わせるために、大急ぎで改良を始めたわけですが、第一回目は、会議システムの根幹を変えることなく、短期間で開発するために、ユーザー側のアプリからPenPlusプロをコントロールできるような形で改良を行いました。
お蔭様で、評判は上々。しかし、中途半端な改良であったために、ユーザーアプリがフォーカスを失うとずれが起きるなどの問題点を解決できないという問題にぶつかったのです。「これを解決できないと、売り物にならない」と判断し、泣く泣く発売を延期、一時期は開発を諦めかけました。
この問題を解決するには、通常のソフトであるPenPlusプロを、開発部品であるActiveXに替える必要があると判断し、さらなる改良に踏み切りました。ActiveXはシステムに貼り付けるだけで簡単にその機能が利用できる開発部品の事です。
通常のEXEとActiveXの違いに悪戦苦闘しつつも、ついにプロのActiveX版である「PenPlusデベロッパー
ver1.0」をその年の末に完成。VisualBasicで作成したPenDocのソースコードが800行であったのに比べ、PenPlusデベロッパーでは、ほとんど同じ機能のものを僅か200行で作成する事ができました。しかも、実際のコードは、PenPlusデベロッパーへの簡単なコマンドの羅列だけの簡単なですみました。
5.医療現場との共同開発で「使えるシステム」に。
千葉大付属病院の横井先生との共同研究の結果、次のような改良を加え、「PenPlusデベロッパー
ver1.5」が完成したのです。
@ 筆圧で色の濃さが変わる色鉛筆機能
A コメントと患部写真の位置とズレが生じない引き出し線機能
B 実際の医療現場で使いやすいインターフェース
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千葉大付属病院の横井先生と共同開発した電子カルテ |
これらの改良の結果、PenPlusデベロッパーは、千葉大付属病院はもとより、富山医科薬科大学や愛知学院大学においても、かなり「シンプルで使いやすい」との好評を得るものとなったのです。
電子カルテを使用される先生方に使いやすく、電子カルテを開発している開発者が簡単に組込める、手書き入力ソフト開発ツール「PenPlusデベロッパー」に関して・・・
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